外見とからだのケア

さまざまな副作用への対処法

治療内容や使用する薬の種類や量、そのときの体調で副作用は変わります。
がんの治療でおもにどんな副作用が起こるのか、またその対処法を知っておきましょう。

下痢

 放射線治療を受けている人に生じる腸の障害を「放射線腸炎」といいます。多くの場合、放射線によって腸の粘膜が障害を受け、食物や水分を消化・吸収できなくなることで起こります。また、化学治療でも、腸管の神経が刺激されて腸の動きが活発になり、下痢になることがあります。
 下痢は多くの場合、治療開始から2週間ほどで起こります。下痢になると便の回数が増えるほか、便が泥状や水状になったり、血が混じることも。下痢が続いた場合は、肛門周囲の粘膜がただれて痛みます。皮膚についた尿や便は、低刺激の温水洗浄トイレを使うか、やわらかいトイレットペーパーでやさしくふきましょう。痛みが強ければ、温水洗浄トイレの使用は控え、スクワラン配合の薬用洗浄剤などで押さえぶきをしてください。肛門粘膜のただれがひどい場合は、病院で軟膏を処方してもらうとよいでしょう。
 食事は消化がよいもの(おかゆやうどんなど)を少しずつ食べましょう。下痢が続くと、カリウムが失われやすいので、カリウムが豊富な果物(バナナやリンゴなど)を食べるのもおすすめです。下痢がしばらく続くと、脱水しやすくなります。常温の飲み物を少しずつ、こまめにとりましょう。スポーツドリンクや経口補水液※1は、脱水予防に効果的です。
 外出先では、トイレの場所を事前に確認しておくと安心です。また、便もれが不安なときは、便もれ専用パッドを試してみてはいかがでしょうか。もれ出た便が肌に付着するのを防ぎます。

便秘

 がんの治療で、腸の働きが弱くなり、便秘になることもあります。便秘予防には、食事が大切です。水分や食物繊維の多い食品をとりましょう。ただし、便秘が何日も続くときは消化の悪いもの(こんにゃく、昆布、ごぼうなど)は避けてください。 
 また、定期的な排便習慣をつけることも効果があります。胃・結腸反射※2の起こりやすい朝食後に排便を試みたり、便意がなくても、毎日同じ時間にトイレに行くとよいでしょう。そのほか、便秘解消のケアとして簡単にできるのが「ツボ押し」です(下イラスト参照)。

図:便秘解消のツボ押し

感染症

 がんの治療中は、血液中の好中球※3が減少することなどから、免疫力が低下し、さまざまな感染を起こしやすい状態です。そのため、通常よりも、かぜや肺炎、インフルエンザなどの感染症にかかりやすく、重症化することも少なくありません。なお、感染が疑われる症状は、
37.5℃以上の発熱
寒け、震え
口内炎、歯痛
下痢、吐き気
 など、多岐にわたります。人によって症状はさまざまなので、これ以外にも普段と違う症状があるときは、早めに主治医に相談してください。
 感染予防に大切なのは、体を清潔に保つことです。こまめに手洗いと、うがいをし、可能な限り、毎日入浴しましょう。発熱時や体がだるくて入浴できないときは、かたく絞ったタオルで体をふきましょう。また、できるだけ人混みを避け、外出時はマスクを。部屋のカビやホコリにも注意が必要です。
 傷があると、そこから細菌やウイルスに感染しやすくなります。皮膚や口、粘膜を傷つけないよう、日ごろから注意しましょう。炊事や洗濯の際は、手が荒れないよう、できるだけ手袋を利用することをおすすめします。

貧血

 抗がん剤や放射線は、がん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響します。特に血液をつくる骨髄は、治療の影響を受けやすいため、血液中の赤血球数が減少し、全身に酸素を運ぶヘモグロビンが不足して貧血が起こりやすくなります。貧血になると、体内の酸素を補うのに多くの血液が使われ、動悸(どうき)や息切れ、頭痛やめまいなどの症状が現れます。しかし、症状は人によってさまざまです。自覚症状がないことも多いので、血液検査の際は、ヘモグロビンの値を確認しましょう。
 貧血の症状があるときは、休息と睡眠が大切です。また、急激に起きると、立ちくらみを起こしやすいので、起きるときはまずゆっくり上半身を起こし、ひと息ついてから立ち上がるようにするとよいでしょう。食事は良質なたんぱく質や鉄分、ビタミンC、ビタミンB12を多く含む食品(鶏卵、オレンジ、ブロッコリー、レバー、牡蠣〈かき〉など)をとりましょう。

しびれ

 化学治療の副作用によるしびれは、一度出現すると、症状の程度にもよるものの、回復に時間がかかります。手や足に思い当たる症状があるときは、早めに主治医に相談してください。

しびれのおもな症状

ジンジンと重い痛みや、ピリピリとした痛みがある
温かさや冷たさを感じにくい
針で刺されたような痛みがある
ボタンをかけるのが難しい
パソコンのキーボードや携帯電話を操作しにくい
歩いているときに、よくつまずく
手に持ったものを落としやすい

しびれを和らげるためには、

  • ①手足を冷やさない
  • ②手指の運動をする
  • ③しめつけない
図:しびれを和らげるためには

ことを心がけてください。しびれを完全になくす治療法は確立されていないので、こうした予防的ケアと早期発見がとても大切です。
 肌の露出はできるだけ控え、靴下やレッグウォーマー、手袋などで手足を保温しましょう。温かい湯につかる入浴時のマッサージも効果的ですが、余計にしびれがひどくなってしまう場合もあります。少しでも違和感があるときは、中止しましょう。
 また、手を閉じたり開いたり、ボールを握るなどの運動を繰り返すのもよいでしょう。手足をしめつけるようなきつい靴下や靴、ストッキングなどは、症状を悪化させる原因となります。
 しびれを多少軽減する薬もあるので、主治医に相談しましょう。

吐き気・嘔吐

 吐き気や嘔吐(おうと)も、がん治療の副作用で多くみられる症状です。吐き気止めの薬が効く場合が多いので、早めに主治医や看護師に相談してください。
 満腹になると、吐き気を催しやすいので、食事は少量ずつにしましょう。炊き立てのごはんのにおいが苦手になるなど、吐き気があるときは、温かい食事より、冷たいもののほうが食べやすいようです。
 吐き気を催しそうなときは、冷水やレモン水でうがいをしたり、氷やキャンディを口に含むと、口の中がさっぱりします。胃の辺りがムカムカするときは、氷枕で冷やすのも効果的です。

コラム
エピテーゼを使用する場合は?

 エピテーゼ(義肢などの医療用人工物)は、常日ごろ装着しているのが基本です。長期間外していると、腕や足がむくみ、装着しづらくなります。また長時間の装着では蒸れたりするので、清潔を保つことが大切です。装着部の皮膚の状態がよくない場合は、主治医に相談しましょう。

※1経口補水液
水分と電解質をすばやく補給できるようにナトリウムとブドウ糖の濃度を調整した飲料。熱中症の予防や下痢、嘔吐時の水分・電解質の補給に役立つ。

※2胃・結腸反射
食べ物が胃の中に入ると、その信号が大腸に送られて収縮し、便を直腸に送り出そうとする働きのこと。朝食後に強く起こる。

※3好中球
白血球の種類のひとつ。体に侵入した細菌や真菌(カビ)などを直接攻撃し、感染から守る役割を果たす。